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書評コーナー
2017 有馬記念 そして「さらばサラトガ 」寺山修司
成田山-紋章-2018-1-5

成田山-参拝する人々-2018-1-5
Pentax-LX ポジフィルムにて撮影

先日、成田山新勝寺へ新年のお参りに行った。 
その帰り、静まったバスの中で、通しで、寺山修司のラジオドラマ、「さらばサラトガ」を聴いた。44分の精神的な旅である。滅多に取れない時間である。

このCDブックを買ってから、数年が経つ。
「コメットイケヤ」が欲しかった訳であるが、「さらばサラトガ」とセットだったので、大枚をはたいて買った記憶がある。
その時まで、「さらばサラトガ」というラジオドラマは知らなかった。
そして、聴いて、私は立ち竦んだ。
ここには、競馬の周りを巡る人生模様が、限りない愛惜をもって描かれている。
私は、2017年の有馬記念レースで、生まれて初めての馬券を買った。このラジオドラマで、不世出の名馬サラトガは、有馬記念では勝てないだろうとナレーションが入る。

サラトガは、主人公の少年の父親が亡くなった日に産まれる。主人公は、片目のロンググッドバイだけを可愛がり、サラトガを放置する牧童であった。
夜の河で、ロンググッドバイの身体を洗っていると、対岸からサラトガは、その様子をじっと見ている。眼を潤ませて。

主人公は、騎手になりたかったのだが、体重が50kgを切ることは無理で、その日暮らしの都内での日々を送る。そして、飲み屋のウェイトレスと結婚し、玉突き屋の2階を住まいとして暮らし始めるが、臨月中の女は、階段から落ちて、不具の身体となってしまう。
主人公は、やる気もなく、土日に競馬場に行くのが唯一の楽しみであったが、こうなってしまい、家具から何からすべてを質屋に入れて、3万円の金を作る。そして、そのお金を持って、有馬記念、師走の中山競馬場に行く。サラトガ以外の馬に全額賭けるつもりだったが、競馬場で曳かれていく馬の中で、一頭が主人公の前で立ち止まる。サラトガだった。「サラトガは私を覚えていたのだ。その眼は、あの少年の日の河べりにいた時と同じ眼をしていた」とある。
主人公は、平手打ちを食らったように、有り金全部を、サラトガの単勝に賭ける。
そして、サラトガは勝つのだ。

ドラマは主人公が、引退するサラトガの乗る列車の後尾の車両に、女と共に乗るシーンで幕を閉じる。
「サラトガは勝った。勝ったサラトガは美しかった。私も勝利しなければ•••私にとって勝利とは何なのだろう•••」

このラジオドラマは、若い人たちにとっては、昭和の匂いが強いと感じるかもしれない。でも、機会があったら、是非、暗い寝室に横になって、iPhoneなりiPodなりで、聴いてほしいと思う
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